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プロレクト調査レポート #03 | 全文公開(フォーム入力不要)

稟議の壁

「社内で検討します」の、その先を調べた

BtoBの商談は、その場では決まらない。買い手が「社内で検討します」と言ったあとの「見えない時間」 ― 稟議・合意形成のプロセス ― で何が起きているかを、国内の一次データで追いました。

発行
プロレクト株式会社
シリーズ
PROLLECT RESEARCH ― REPORT #03
調査時点
2026年7月
形式
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「社内で検討します」の、その先を調べた

BtoBの商談は、その場では決まらない。買い手はこう言う ―「社内で検討します」。その会議室に、売り手は入れない。本レポートは、その「見えない時間」を国内の一次データで追ったものである。全データに調査主体・時点・サンプル数を併記し、公開一次ソースで確認できなかった数値は採用していない。相関と因果は区別している。

この号が追う5つの問い

RQ1稟議には誰が・何人関わり、どれくらいかかるか
RQ2稟議が止まる・戻される理由の上位は何か
RQ3決裁者は案件の「何を」見て判断しているか
RQ4買い手はベンダー資料を社内でどう使っているか
RQ5「社内を通しやすかったベンダー」は何が違ったか

00 3行でわかる、会議室の中

結論①:稟議は「情報不足」ではなく「人数と段階」で止まる

承認に1日以上=73.5%、稟議は8割超が2段階以上。課題の首位は「関わる人が多すぎる」41.0%。止めているのは資料の量ではなく、社内の説明コスト。

結論②:決裁者が見ているのは、機能ではなく「通る理屈」

機能比較表は46.2%に「影響しなかった」。有用なのはROI試算55.4%。問われるのは機能の優劣でなく、費用対効果とリスクの説明可能性。

結論③:ベンダー資料は、そのままでは会議室に届かない

68.4%が資料を「加工してから」社内共有。担当者は売り手の資料を社内向けに翻訳する編集者になっている。

会議室を象徴する4つの数字

73.5%稟議の承認に1日以上かかる(n=312)
58.5%大型購買で意思決定に7名以上が関与(n=330)
68.4%ベンダー資料を「加工して」社内共有(n=317)
46.2%機能比較表は購買判断に影響しなかった(n=330)

出典:弁護士ドットコム(2024, n=312)/IDEATECH×デマジェン総研(2026, n=307・n=330)/IDEATECH×Bizibl(2026, n=317)。

本レポートが導く「会議室で負けない設計公式」

設計公式:
社内の説明者として支援
× 決裁者の問いに先回り
× そのまま稟議に添付できる形

01 買い手の最大の仕事は、もう「選ぶこと」ではない

良し悪しの判断は、営業に会う前にほぼ終わっている。残された難所は、その判断を社内の合議体に通し、稟議を突破することのほうにある。

そして止まる正体は情報不足ではない。買い手の40.7%は資料を読み切れていない。理由の首位は「長すぎる・情報量が多すぎる」でともに59.7%。

5.6→18.3人低価格帯→高価格帯の関与人数(n=600)
8割超稟議が2段階以上を通る(n=307)

売り手が陥る罠

商談が進まないとき、反射的に「資料をもう一本」渡す。だが止まる原因が情報量でないなら、資料の追加は担当者の説明コストを増やすだけ。

出典:IDEATECH×Bizibl 2026, n=317(40.7%・59.7%)/ワンマーケティング 2025, n=600(関与人数)/IDEATECH×デマジェン総研 2026, n=307。

02 「社内で検討します」は、外交辞令ではない

期間 ― 承認は1日で終わらない

「2〜3日」が最多52.5%。1日以上が計73.5%。大型購買は54%が半年以上を要する。

関与 ― 直属上長で終わらない

1段階で済むのは11.7%だけ。8割超が2段階以上、約2割が3段階以上を通る。

差し戻し ― ほぼ全員が経験している

起案者の97.2%が差し戻しを経験(参考値・n=107)。ただし、その理由は誰も測っていない。

一言でいえば ― 売り手が見ている「商談」は、買い手の社内では 起案 → 根回し → 承認×N段 → 決裁 という長い列の、入口にすぎない。

出典:弁護士ドットコム 2024, n=312(52.5%・73.5%)/ワンマーケティング 2025, n=600(54%)/IDEATECH×デマジェン総研 2026, n=307・n=330/エイトレッド 2025, n=107(97.2%・参考値)。

03 稟議は「情報不足」では止まっていない

稟議プロセスの課題(複数回答・n=312)割合
関わる人が多すぎる41.0%
根回し・事前調整に時間がかかる35.9%
対象範囲が広すぎる31.6%

上位はいずれも「説明・調整のコスト」。「判断材料が足りない」は上位に現れない。

【計測の空白】 差し戻しはほぼ全員(97.2%・エイトレッド 2025, n=107・参考値)が経験しているのに、「なぜ戻されたのか」を選択肢別に聞いた国内調査は、確認できた範囲で存在しない。買い手の最大の障害が、業界の計測の空白地帯になっている。

出典:弁護士ドットコム 2024, n=312(41.0%・35.9%・31.6%)/エイトレッド 2025, n=107(97.2%・参考値)。

04 決裁者は、機能ではなく「通る理屈」を見ている

46.2%機能比較表は「購買判断にほとんど影響しなかった」
55.4%「ROI計算シミュレーター・投資対効果の試算」を有用と評価

決裁者は「選ぶ人」ではなく「承認する人」。机上で見ているのは製品ではなく「これは通していい案件か」という理屈。欲しいのは機能一覧ではなく、承認を正当化できる根拠。

出典:IDEATECH×デマジェン総研 第2弾(2026, n=330)/才流(2025, 経営層 n=393)/6sense(2025, n≈4,000)。

05 買い手は、あなたの資料を"翻訳"している

68.4%が、受け取った資料を「加工してから」社内共有する(n=317)。7割近くが、売り手の資料をそのまま流していない。

加工の中身(複数回答・n=217)割合
数値や図表だけをコピー&ペースト51.2%
必要部分のスクリーンショット45.6%
ChatGPTなどのAIで要約35.9%
自分の言葉で要約35.5%

これらはすべて、資料を「社内で通る形に翻訳している」痕跡。担当者は、売り手の資料の"無償の編集者"をやらされている。しかも40.7%は資料を読み切れてもいない。

出典:IDEATECH×Bizibl(2026, n=317・加工の中身は複数回答 n=217)。引用時「リサピー®」表記。

06 社内を通しやすかったベンダーの3つの共通点

① 決裁者の問いに先回りした

ROI試算・費用対効果・リスクと撤退条件を、あらかじめ渡していた。(04章:ROI試算を55.4%が有用)

② 再編集コストを最小化した

切り出せる図表・冒頭の結論・稟議にそのまま添付できる形で作っていた。(05章:68.4%が加工して共有)

③ 担当者の社内説明に伴走した

関わる人数と承認段階に合わせ、承認者ごとの材料を設計していた。(02・03章:関与7名以上58.5%)

合意形成チームの高品質取引報告は2.5倍、最初に接触したベンダーが約8割を受注。いずれも相関であり因果ではない。

出典:Gartner Press Release 2025-05-07, n=632/2026-03-09, n=646(+20%・2.5倍・2倍)/6sense Buyer Experience Report 2025, n≈4,000(約8割)。相関であり因果ではない。

07 「社内で通る理屈」の設計原則

すべての原則は、一つの発見 ―買い手は資料を"翻訳"して社内を戦っている― から導かれる。

① 「読む」でなく「使う」を基準に作る

結論を冒頭に、図表は切り出せる形に。読了率でなく引用のされやすさ。

② 決裁者の3点を先回りして渡す

比較の理屈・費用対効果・リスクと撤退条件。機能でなく承認の根拠で勝つ。

③ 承認者ごとに一枚ずつ分解する

経理に費用対効果、情シスにセキュリティ、経営層に撤退条件を。

④ 商談を「社内提案の準備室」にする

「いつ決まりますか」を「どなたの承認で止まりそうですか」へ。

⑤ 測るのは商談数でなく到達率

資料が稟議に登場したか。商談後に計測点を一つ増やす。

出典:IDEATECH×Bizibl 2026, n=317(68.4%・40.7%)/IDEATECH×デマジェン総研 2026, n=330(46.2%・55.4%)・n=307(41.0%・35.9%・58.5%)/Gartner 2024, n=632(+20%)。

結び ― 買い手の担当者は、味方である。

BtoBの商談は、会議室で負ける。そして会議室に、売り手は入れない。入れるのは、資料と、担当者の説明だけ。

売り手にできる最良の支援は、その2つを「社内で通る理屈」として設計しておくこと。負ける相手は、担当者でも競合でもなく、「社内の説明コスト」そのものである。

セルフチェック:あなたの資料は、会議室まで届いていますか?

本レポートで見てきた「買い手の社内合意」に、自社の資料と商談は応えられているでしょうか。最後に、本文02〜07章に対応した7つの問いで点検してください。

当てはまるものにチェックを付けてみてください。

判定:チェックの数でわかる、会議室からの距離 (チェック数: 0 / 7)

チェックを付けると、ここに判定が表示されます。

参照文献一覧

本レポートに掲載した数値は、すべて以下の一次調査に基づく。各出典の正式名称・発行主体・調査時点・サンプル数を記載する(2026年7月時点・当社照合)。

国内調査

  • 弁護士ドットコム株式会社/プロフェッショナルテック総研「<社内稟議の実態調査>」クラウドサイン利用者対象・ウェブアンケート。2024年9月25日〜10月31日、n=312。
  • デマジェン総研(北川裕康氏)×株式会社IDEATECH「日本のBtoB大型購買プロセスに関する実態調査」(第1弾)リサピー®企画・インターネット調査。2026年3月23〜26日、n=307。
  • デマジェン総研(北川裕康氏)×株式会社IDEATECH「【第2弾】日本のBtoB大型購買プロセス調査」リサピー®企画・インターネット調査。2026年5月25〜26日、n=330。
  • 株式会社IDEATECH×株式会社Bizibl Technologies「BtoB商材導入で使われる『社内検討資料』の実態」リサピー®。2026年5月、n=317(加工の中身は複数回答 n=217)。引用時「リサピー®」表記。
  • 株式会社才流(さいる)「中小企業経営者編 BtoB商材の導入実態調査」2025年4月、経営層 n=393。
  • 株式会社エイトレッド 稟議実態調査。2025年10月、n=107(参考値)/2022年 n=109。
  • ワンマーケティング株式会社「BtoB購買プロセス白書2025」2025年、n=600。

グローバル調査

  • Gartner, Inc. Press Release(2025-05-07, n=632/2026-03-09, n=646)。相関値であり因果ではない。
  • 6sense "Buyer Experience Report 2025", n≈4,000。相関値であり因果ではない。

※出典の異なる数値は母集団・設問が異なるため単純比較はできない。国内主要データはインターネット調査を含む。エイトレッド調査(n=107/109)は参考値。数値は各調査の母集団に依存する。

© 2026 プロレクト株式会社 本レポートの引用・共有を歓迎します。引用の際は出典として「プロレクト株式会社『稟議の壁』(PROLLECT RESEARCH #03)」を明記してください。

用語の定義(FAQ)

本レポートの主要概念を、初出の読者向けに定義する。数値の出典は本文・付録に記載。

稟議(りんぎ)とは何ですか?

日本企業で、担当者が起案した案件を関係部署・上長・決裁者へ順に回覧し、承認(押印・電子承認)を得ていく社内の意思決定プロセスです。本レポートの調査では、稟議は8割超が2段階以上を通り、約2割は3段階以上を通ります(IDEATECH×デマジェン総研 2026年、n=307)。承認に1日以上かかるケースは73.5%(弁護士ドットコム 2024年、n=312)。BtoBの商談が「その場で決まらない」最大の理由がここにあります。

「稟議の壁」とは、具体的に何が壁になっているのですか?

情報の不足ではなく、社内の説明コストです。稟議プロセスの課題の上位は「関わる人が多すぎる」41.0%、「根回し・事前調整に時間がかかる」35.9%、「対象範囲が広すぎる」31.6%(弁護士ドットコム 2024年、n=312)で、いずれも「説明・調整のコスト」に関わるものでした。「判断材料が足りない」は上位に現れません。買い手を止めているのは資料の量ではなく、社内を通す手間です。

決裁者は、商談の「何を」見て判断しているのですか?

機能の優劣ではなく、「これは通していい案件か」という理屈です。本レポートの調査では、機能比較表は46.2%に「購買判断にほとんど影響しなかった」と評価される一方、「ROI計算シミュレーター・投資対効果の試算」は55.4%が有用と評価しました(IDEATECH×デマジェン総研 第2弾 2026年、n=330)。決裁者は「選ぶ人」ではなく「承認する人」であり、欲しいのは機能一覧ではなく、承認を正当化できる根拠です。

「ベンダー資料の翻訳」とは、どういう意味ですか?

買い手の担当者が、売り手から受け取った資料をそのまま社内に流さず、社内で通る形に加工していることを指します。本レポートの調査では、68.4%が受け取った資料を「加工してから」社内共有していました(IDEATECH×Bizibl 2026年、n=317)。加工の中身は、数値・図表のコピー&ペースト、必要部分のスクリーンショット、AIでの要約、自分の言葉での要約など。担当者は、売り手の資料の"無償の編集者"を務めています。

このレポートは、前号までのシリーズと何が違いますか?

本シリーズは「BtoB受注導線」を多角的に扱う独立レポート群です。本号は、買い手が商談の「あと」に社内で何と戦っているか ― 稟議・合意形成のプロセス ― を国内の一次データで追ったものです。各号は単体で読み切れるよう設計しています。

このレポートは引用・共有できますか?

はい、引用・共有を歓迎します。引用の際は出典として「プロレクト株式会社『稟議の壁』(PROLLECT RESEARCH #03)」を明記してください。数値は各調査の母集団・定義に依存するため、出典の異なる数値の単純比較は避けてください。

© 2026 プロレクト株式会社
本レポートの引用・共有を歓迎します。引用の際は出典として「プロレクト株式会社『稟議の壁』(PROLLECT RESEARCH #03)」を明記してください。

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