AIに聞かれる入口で、何が起きているか
買い手は、Google検索の前に ―― あるいは並行して ―― AIに聞くようになった。「◯◯ができる会社を挙げて」。そのリストに自社が載っていなければ、買い手は存在に気づかないまま検討を始める。本レポートは、このAIという入口で何が起きているかを国内の一次データで追ったもの。全データに調査主体・時点・n数を併記し、確認できなかった数値は採用していない。
この号が追う5つの問い
| RQ1 | 買い手はどれくらい、どう、AIで探しているか |
| RQ2 | 売り手の側は半年でどう動いたか |
| RQ3 | AIは発注先の勢力図をどう変えているか |
| RQ4 | 買い手はAIの答えをそのまま信じているか |
| RQ5 | 全員が動く時代に、何が差を生むのか |
00 3行でわかる、AIという新しい入口
結論①:買い手はもうAIで探し、知らない会社を見つけている
発注担当者の75.0%がAI検索を利用(Piftee, n=196)。利用者の82.3%が未知の企業を発見し、21.1%が実際に発注。知名度でも検索順位でもない経路が生まれた。
結論②:売り手も半年で一変した。無関心はもう消えた
LLMO「関心なし」は2025年12月の49.6%から2026年7月に3.4%へ激減(PRIZMA, n=1,032)。実施は7.82%→22.9%、実施・検討・情報収集で9割以上。
結論③:勝負は「発見される」の次、「裏取りに耐える」へ
AIで見つけた買い手の98.0%が裏取り。最多は公式サイト確認70.7%(Piftee, n=147)。発見と信頼の二段構えで初めて候補に残る。
AIという入口を象徴する4つの数字
| 75.0% | 発注担当者が生成AI検索を利用(n=196) |
| 82.3% | AI検索で未知の企業を発見(利用者 n=147) |
| 3.4% | LLMO「関心なし」(半年で49.6%から激減、n=1,032) |
| 70.7% | AI発見後、公式サイトで裏取り(利用者 n=147) |
本レポートが導く「AIに選ばれる設計公式」
設計公式:
AIの回答に登場する
× 公式サイトが裏取りに耐える
× 自社にしか出せない一次情報を持つ
出典:Piftee 2026年5-6月, n=196/利用者 n=147/PRIZMA 2026年7月, n=1,032。数値は各調査の母集団に依存。
01 AIは「知らない会社」を買い手に教えている
買い手の情報収集の入口が、AIに移り始めた。従来のGoogle検索は最多(75.0%)のままだが、その隣に生成AI検索という新しい入口が生まれ、最初の一手として選ぶ人が9.7% ―― 比較サイトやSNSを上回り情報源第4位につけた。
そしてAIは買い手の視野を広げる。AI検索利用者の82.3%が「それまで知らなかった企業をAI経由で発見」し、そのうち21.1%が実際に発注した。知名度でも検索順位でもなく、「AIの回答に登場するか」が発注候補に入る新しい分岐点になった。
| 82.3% | AI検索で未知の企業を発見(利用者 n=147) |
| 21.1% | 発見した企業に実際に発注(利用者 n=147) |
買い手の声:「名の知れた発注先のみならず、中小企業も勧めてくれる」「いままでの検索や聞き取りで逃していたところも見つかる」(自由記述より)
出典:Piftee「BtoB発注先選定におけるAI検索活用の実態調査 2026」2026年5-6月, n=196/利用者 n=147。
02 買い手はもうAIで探している
利用 ― 経験75%、日常利用は5人に1人
日常利用21.9%+時々利用など。1年前と比べ探し方が「変わった」と感じる担当者は53.6%。
段階 ― 検討の「入口」で使われる
最多は「どんな会社があるか調べる」61.9%と「候補を比較・評価」59.2%。認知の最前線にAIが割り込んだ。
規模 ― 中堅企業が最も速い
従業員100〜299名で利用93.5%と最高。大企業(1,000名以上)は66.7%。動きの速い層ほどAIで発注先を見つけている。
大規模調査でも裏づけ ― 買い手1,573名の41.6%が「生成AI・AI検索の購買判断への影響が増えた」と自覚(HubSpot Japan 2026)。
出典:Piftee 2026年5-6月, n=196/利用者 n=147/HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査 2026」2026年6月, n=1,573(マクロミル実施)。
03 半年で市場は動いた ― 無関心は消えた
同一設問の定点調査が、その速度を捉えている。LLMO対策に「関心なし」と答えたマーケターは、半年でほぼ半数から消えた。
| 同一設問による比較 | 2025年12月 → 2026年7月 |
|---|---|
| LLMO「関心なし」 | 49.6% → 3.4% |
| LLMO「すでに実施」 | 7.82% → 22.9% |
| 業務でのAI活用 | 44.4% → 94.0% |
| 情報収集でAI活用 | 22.6% → 44.6% |
実施・検討・情報収集を合わせると9割以上が始動。製造業の実施率も8.8%→30.5%と半年で約3.5倍に。
出典:PRIZMA「マーケティングにおけるAI活用やLLMO対策の実態調査」定点調査(2025年12月 n=1,036/2026年7月 n=1,032)。同一設問による比較。
04 AIは「知名度の壁」を下げた
従来のBtoBは知名度と検索順位の勝負だった。無名の会社やSEOに投資できない中小企業は候補に入れなかった。AIはこの構造を部分的に崩している。
| 83.0% | AI検索で選定時間が短縮(利用者 n=147) |
| 34.5% | 中堅企業の未知企業への発注率(n=29) |
変化が最も鮮明なのは従業員100〜299名の中堅企業。AIで発見した未知の企業に実際に発注した割合は34.5%と全規模で最高(大企業は8.3%)。BtoBの主要な買い手層で、AIが発注先を選び直す動きが最も進んでいる。
【計測の空白】 「AIで発見した・発注した」という買い手の自己申告は出始めたが、売り手側のCRMやアクセス解析で「この受注はAI経由だった」と経路を追跡した公開データはごく限られる(当社調べ)。次の計測フロンティア。
出典:Piftee「BtoB発注先選定におけるAI検索活用の実態調査 2026」2026年5-6月, n=196/利用者 n=147/中堅企業 n=29。
05 発見の次は「裏取り」に耐えるか
AIで情報を得た買い手の98.0%が裏取りをする。「裏取りしない」はわずか2.0%。AIは候補を出す道具であって、決定を下す道具ではない。
| 裏取りの方法(複数回答・利用者 n=147) | 割合 |
|---|---|
| その企業の公式サイトを確認 | 70.7% |
| Google検索で別途調べる | 59.9% |
| 比較・レビューサイトで確認 | 40.1% |
新しい導線 ― AIで発見 → 従来検索で裏取り → 公式サイトで最終確認。AIに載るだけでは足りず、その後訪れる公式サイトが確認に耐えなければ候補から落ちる。一方でAI推薦は加点にもなり、59.7%が「信頼感が高まる」、78.1%が「今後AI検索利用は増える」と予測。
出典:Piftee「BtoB発注先選定におけるAI検索活用の実態調査 2026」2026年5-6月, n=196/利用者 n=147(裏取り・複数回答)。
06 全員がやる時代の主戦場 ― 一次情報
誰もがAI検索対応をやる時代に、何が差を生むか。売り手のデータは一点に収束する ―― 全業界で過半数が挙げた主軸施策が「自社の独自データ(一次情報)の発信」。
なぜ効くのか。買い手はAIを疑い公式サイトで裏取りする(05章)。他社の受け売りでない独自データ・実績・事例があれば、その確認に応えられる。一次情報は、発見(AIに載る)と信頼(裏取りに耐える)の両方に同時に効く。
| 39.6% | 課題首位「技術的な知識不足」(n=1,036) |
| 32.6% | 課題「信頼性担保のリソース不足」(n=1,036) |
障害は「無関心」から「知見不足」へ変わった
動かない壁は消え、「動きたいのに動けない壁」に変わった。ここに外部の専門知見が入る余地がある。なお成果(検索順位改善36.5%等)は相関であり因果ではない。
出典:PRIZMA「マーケティングにおけるAI活用やLLMO対策の実態調査」2026年7月 n=1,032/課題・効果は2026年1月版 n=1,036。効果は相関であり因果ではない。
07 「AIに選ばれる」情報設計の原則
すべての原則は、一つの導線 ― AIで発見され、従来検索で裏取りされ、公式サイトで最終確認される ― から導かれる。
① 検索順位でなく「AIの回答への登場」を目標に
AIが引用しやすい形(結論・構造化・一次情報)で設計する。
② 公式サイトを「裏取りに耐える」設計に
実績・事例・価格の考え方を一次情報として明記する。
③ 自社にしか出せない一次情報を資産に持つ
独自調査・顧客データ・現場知見を公開コンテンツに変える。
④ 買い手の「疑い」を味方につける
誇張でなく検証可能な事実・出典で語る。疑い深い買い手ほど根拠を選ぶ。
⑤ 測るのは「AI経由の到達」という新接点
流入に「AI検索経由」の計測点を加える。先に測る者が先行する。
出典:Piftee 2026, n=196/利用者 n=147(75%・82.3%・98%・70.7%)/PRIZMA 2026, n=1,032(一次情報の主軸・44.9%)。
結び ― 全員が走り出した。次は、走り方の勝負。
半年前、AI検索対応は「やるかどうか」の問いだった。いま、その問いは終わった。無関心は消え、9割が動き出し、買い手はもうAIで探している。
残ったのは「どう差をつけるか」。差がつく場所ははっきりしている ―― AIに発見され、裏取りに耐え、自社にしか出せない一次情報を持つこと。確かな情報資産を積み上げた会社が、AIにも買い手にも選ばれる。