年の初めに方針を決め、作りたいコンテンツの一覧も作った。月2本のペースで作り始め、最初の2か月は順調だった。ところが、ほかの業務が重なった月に、次の1本を決める時間が取れなくなる。一覧はあるのに、どれから作るかが決まらない。
よくある場面です。止まったのは、やる気や能力の問題でしょうか。この記事では、決めて、作って、振り返る手順が、個人の頑張りに依存していたと考えます。
この記事は、マーケティングを兼務していて、手を動かせるのが自分ひとり、という BtoB のマーケティング担当の方に向けて書いています。方針づくりの話はしません。すでに決めた方針を、止めずに回すための実務の話です。担当者に手順を渡したい事業責任者の方にも使えるように、決めておくことを途中にまとめました。
持ち帰っていただくのは、ひとりでも回しやすい、月1回・60分の手順です。60分で行うのは、その月の判断と着手までです。仕上げや公開の作業は、翌週以降の予定に入れます。読み終えたら、来月の60分を予定に入れる日を決めてください。
続かないのは、珍しくない
まず、調査を2つ見ます。
Content Marketing Institute(CMI)と MarketingProfs が2024年6月〜8月に行った調査では、B2Bの回答者980人(主に北米)のうち、コンテンツ制作以外の課題として最も多く挙がったのが「リソース不足」で、54%でした(前年は58%)。コンテンツを一貫して作り続けることを課題に挙げた人も、42%います(前年の54%からは減っています)。
国内では、シーラベルなどBtoBマーケティング支援企業14社の合同調査(2024年11月〜12月・有効回答257人)で、54.1%の企業が「チームリソースの不足」を最も重要な課題に挙げています。
調査で分かるのは、リソースが足りないことと、作り続けることの難しさを、少なくない回答者が課題に挙げている、というところまでです。そのうえでこの記事では、続かないことを能力の問題として扱わず、今の体制でも回しやすい手順を先に整えます。
出典:Content Marketing Institute「B2B Content Marketing: 2025 Benchmarks & Trends」(調査期間 2024年6月25日〜8月16日・B2B 980人)/株式会社シーラベル「BtoBマーケティング企業実態調査2025」(回答期間 2024年11月18日〜12月18日・有効回答257人)
結論:月1回・60分の5つの手順
続ける仕組みは、月1回の手順にまとめられます。手順は5つです。
- 見る:数字3つを表に書き足す
- 決める:次に着手する1本を決め、一行書く
- 作る:型に沿って下書きに着手する(AIを使う場合は、型と参考情報を渡す)
- 届ける:誰に、どの経路で、いつ届けるかを決める
- 型を直す:手順書や指示文を、1か所で直す
見るから始めるのは、先月の結果が、次の1本を決める材料になるからです。大人数の専任チームを前提にしない手順です。私自身も、プロレクトのコンテンツをこの手順でひとりで回しています。お伝えするのは実績の話ではなく、手順の中身です。
各手順の最後に、よくある止まり方を1行ずつ添えました。自分がどこで止まったかを照らし合わせながら読んでください。
60分の時間割

5つの手順を、月1回の60分に並べるとこうなります。最初の15分で表を書き足し、10分で次の1本を決め、20分で下書きの指示と仕上げの予定、10分で届け先、最後の5分で型の直しです。
月の最終週に、この60分を自分で押さえてください。全部できない月は、表と、決定の一行だけを残します。
事業責任者の方に決めておいてほしいのは、3つです。担当者がこの60分を毎月確保できること、次の1本を決めるときに何を優先するか(その月のマーケティングの目的)、そして、仕上げた1本の承認と、手順書の更新を誰が持つかです。
ここからは、架空の例で見ていきます。BtoBの会計ソフトを提供する会社で、マーケティングを兼務する、ひとりの担当者を想定します。
手順① 見る:数字3つの表
行がコンテンツ、列が月で、各月に「見られた数・反応(ダウンロードや問い合わせ)・商談へのつながり」の3つだけを書きます。3つで何を数えるか(たとえば、見られた数はページビューかユーザー数か)と集計期間は、初回に決め、毎月同じ定義で記録します。
架空の記入例です。
| コンテンツ\月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|
| WP「月次決算チェックリスト」 | 980・21・不明 | 1,100・28・不明 | 1,240・38・不明 |
| 導入事例(製造業) | 310・4・商談1 | 290・3・不明 | 330・6・商談1 |
| 記事「インボイス対応の基礎」 | 2,100・5・不明 | 1,900・2・不明 | 1,750・3・不明 |
ホワイトペーパーは、閲覧とダウンロードが伸びています。商談につながったかは分からないので、「不明」と書いたままにします。不明は、空欄より価値のある記録です。
表を見たら、次に変えることを1つ書きます。例では、導入事例は商談につながった月がある一方で反応が少ないので、「事例のCTAをダウンロード資料に変更」と書きました。
商談へのつながりは、分かる範囲で残す判断材料の一つです。商談につながったかどうかだけで、次の1本を決めるわけではありません。公開した本数も、別に記録して構いません。次の1本を決めるときは、本数だけで判断せず、この3つの数字と合わせて見ます。
よくある止まり方:全部の指標を集めようとして、表が完成しない。まず3つから始めます。
手順② 決める:3つの軸で採点し、決定を一行書く
候補を3つ挙げ、3つの軸で採点します。買い手の検討が止まっている場所に近いか。受注までの距離が近いか。作るのにかかる期間が短いか。各軸を1〜3点で、当てはまるほど高く付けます(期間は短いほど高く)。点数は、候補を比べるための目安です。
止まっている場所は、方針を決めたときの資料や、営業から聞く「検討が進まない場面」から書き出します。また、この3軸は受注に近い候補を比べる場合の例です。その月の目的が認知や既存顧客向けなら、「受注への距離」を、責任者と決めたマーケティングの目的への近さに置き換えて構いません。
架空の記入例です。
| 候補 | 止まっている場所に近いか | 受注への距離 | かかる期間 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 導入事例(製造業・2本目) | 3 | 3 | 2 | 8(決定) |
| 機能比較ガイド | 3 | 2 | 1 | 6 |
| 操作説明の動画 | 1 | 2 | 3 | 6 |
例では、2本目の導入事例がいちばん高く、これに決めました。決めたら、決定を一行で書きます。
次の1本=導入事例(製造業)。経理部長の比較検討を進める1本
ここで決めるのは、次に着手する1本です。月に何本作るかは、年初に決めたペースのままで構いません。同点で決められないときは、止まっている場所に近いほうを優先します。
よくある止まり方:採点までして、決定の一行を書かない。一行が無いと、翌週には迷いが戻ります。
手順③ 作る:型と、AIへの指示文
型は一度だけ作り、2本目からは型に沿って埋めます。導入事例の型の、架空の記入例です。
| # | 見出し | 入れる要素 |
|---|---|---|
| 1 | 導入前の課題 | 月次決算の何に時間がかかっていたか |
| 2 | 選定の決め手 | **【あなたが書く】**担当者だけが知る一言 |
| 3 | 導入の流れ | 期間・体制・最初につまずいた点 |
| 4 | 導入後の変化 | 業務がどう変わったか(数字は参考情報の範囲) |
| 5 | 担当者のコメント | 本人に確認し、掲載の許諾を得た言葉 |
| 6 | こんな会社に向く | 条件を2つまで |
| 7 | これから | 次に進めたいこと |
導入事例では、顧客の発言・社名・成果の数字は、公開前に事実確認と掲載の許諾を取ります。記事やホワイトペーパーなど、ほかの形式に使うときも、型にするのは3つです。見出し、それぞれに必要な参考情報、そして担当者だけが書ける箇所です。
AIを使う場合は、この型と参考情報を渡して下書きを出させます。指示文の例です。
あなたはBtoBの会計ソフトのマーケティング担当です。下の【型】と【参考情報】に沿って、導入事例記事の下書きを作ってください。見出しは【型】のとおり。事実と数字は【参考情報】にあるものだけを使い、無いものは「※要確認」と書く。私の経験や判断にあたる部分は空欄にして【あなたが書く】と印を付ける。
下書きに着手したら、仕上げの時間を翌週の予定に入れます。
よくある止まり方:毎回ゼロから構成を考え直す。下書きのまま、公開するかどうかを迷い続ける。型を使い、仕上げの予定を先に押さえます。
AIを使うときの注意3つ
AIは、5つの手順のうち「作る」を補助するものです。使う場合は、任せないものを先に決めます。
- 事実と数字は任せない:参考情報として渡したもの以外は使わせず、出典のない数字が出てきたら、採用せずに確認します
- 自分の経験と判断は書かせない:読み手が知りたいのは、あなたの現場で起きたことと、あなたの判断です。ここをAIが埋めると、どこにでもある文章になります
- ルールを1枚にまとめる:まずはこの3つの注意と、参考情報に顧客の機密情報や個人情報を含めてよいかの自社ルールを1枚に書き、手順⑤と同じ置き場所に置きます。先ほどのCMIの調査では、チームで生成AIを使っているという回答は81%(前年72%)に増えた一方、組織にAIの利用ルールがないという回答が45%(前年61%)ありました
下書きと仕上げの差は、担当者が書いた一文

注意点が守られると、下書きでは、数字のない箇所は「要確認」のまま残り、選定の決め手は「あなたが書く」と空いています。仕上げでは、その空欄に担当者だけが書ける一文が入ります。例では、経理部長の「これなら全拠点を同じ手順にできる」という言葉が、選定の決め手として入ります。
AIで下書きの時間を短くできた場合は、その時間を、この一文の確認と執筆に使います。
手順④ 届ける:経路・誰に・いつ
届け先は、公開の前に決めます。列は3つです。架空の記入例です。
| 経路 | 誰に | いつ |
|---|---|---|
| メール配信 | 既存リード(経理・労務の担当) | 公開週の火曜 |
| 営業から個別送付 | 商談中の3社 | 次回打ち合わせの前日 |
| 事例ページ下部の導線 | 事例ページを読んだ人 | 公開と同時 |
3つとも、すでに持っている経路です。メール、サイト、営業のどれか一つに寄せず、その1本を読んでほしい相手に届く経路を選びます。届けた結果は、翌月、手順①の表に戻ってきます。
よくある止まり方:公開して終わりにする。
手順⑤ 型を直す:直しは1行でいい
その月に気づいたことを、手順書や指示文に1行で反映します。架空の記入例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 変更前 | 「下書きはAIに任せる」 |
| 変更後 | 「下書きはAIに任せる。ただし数字は【参考情報】の範囲。無いものは『※要確認』と書かせる」 |
| 更新日 | 9/30 |
| 置き場所 | 社内wiki「コンテンツ型」ページ(1つに固定) |
直したら、更新日を書きます。置き場所は1つのままにします。
よくある止まり方:直しを頭の中で覚えておくだけにする。翌月には消えています。1行でも書き残します。
ここまでの5つの表は、ウェビナーの特典シートに、記入例版と空欄版で入っています(ウェビナーの申込後、メールでお届けします)。
直近のひと月で、3問
5つの手順を始めるための、最低限の3問です。直近のひと月を思い浮かべ、答えられたら「はい」です。
- 数字を見て、次に変えることを1つ決めましたか(手順①)
- 次の1本を、自分で決められましたか(手順②)
- 手順書や指示文などの型が、1か所に残っていますか(手順③・⑤)
「はい」が0〜2つなら、「いいえ」の手順から来月の60分を始めてください。3つとも「はい」なら、届ける(手順④)まで含めて1周できているかを見てください。
最後に、一つだけ決める
止まった工程が分かれば、翌月に直す場所が決まります。まず、この一文を埋めてください。
来月の60分は、_月_日の_時から。
月次運用シートで、来月の60分を回す
特典の「コンテンツ月次運用シート」(Excel)は、この記事の5つの表と同じ様式です。記入例版と自社用の空欄版があり、AIへの指示文のテンプレートも入っています。来月の60分に、そのまま使えます。
ウェビナー本編では、各手順の記入例を順にお見せしながら解説しています。お申し込みいただくと、視聴URLと一緒にシートをメールでお届けします。
状況によっては、次の選択肢もあります。
- 1周回してみて、回らない工程があった:無料相談で、どの工程で止まったかを一緒に整理します
- 自社で回せるようになるまで伴走してほしい:プロレクトの「実行・定着パートナー」は、回せるようになるまで伴走し、自社で回せたら終わる、卒業型の支援です