資料は増えた。記事もホワイトペーパーもある。それでも、商談や受注につながっているのかが分からず、次に何を作るべきかが決められない。

作れるものが増えた分、次にどのコンテンツを作るべきかの判断は、かえって難しくなっています。この記事では、それを形式から決めるのではなく、買い手が止まっている場所から決める手順をお見せします。手順は3つです。現状を見る。持ち物を並べる。最初の1本を決める。

この記事は、次に何を作るべきか判断しきれずにいる BtoB のマーケティング担当の方と、その判断の基準を担当者と共有したい事業責任者・経営者の方に向けて書いています。

先に、問いをひとつ置きます。あなたのお客様は、営業に会う前に、どこまで検討を進めているでしょうか。

買い手は、営業に会う前に検討を進め、社内を通す仕事を抱えている

海外の調査から見ます。6senseが北米・欧州・アジア太平洋のBtoBの買い手約4,000人に行った2025年の調査では、買い手が売り手と初めて接触するのは、購買プロセスの61%の地点でした(前年は69%)。買い手自身の回答です。国内の調査(下記のマツリカ、IDEATECH)では、これより早い段階で営業と接点を持つという結果が出ているので、日本の数字としては受け取らないでください。

同じ調査では、94%の買い手が、購買の中でLLM(ChatGPTなどの大規模言語モデル)を使っていると答えています。ただし同調査は、LLMの利用によって、選ばれた売り手とのやり取り(コンテンツを含む)が減っている様子は見られない、としています。国内でも、全国の10〜60代の生活者9,278人を対象にした CyberAgent の調査で、検索の手段として生成AIを使う人は、2025年5月の21.3%から2026年2月の37.0%に増えています(BtoBの買い手に限った数字ではありません)。検索がなくなったわけではありません。買い手は検索、AI、口コミ、営業を行き来しながら検討している、と私たちは見ています。

検討が進んだ先には、社内を通す仕事が待っています。国内のソフトウェア購買(従業員100名以上の企業で、直近2年以内に100万円以上のソフトウェアを購買・導入した469人・2022年)では、選定メンバーは4〜5人、承認者は2〜3人が最も多い回答でした。年間契約金額(または一括導入費用)300万円以上の購買に2名以上で関わった人への調査(直近12か月以内・2026年3月・307人)では、発注までの承認・稟議の8割超が2段階以上を通っています。

比較検討から先は、情報を集めることに加えて、社内を通すことが大きな仕事になる、と私たちは見ています。このとき買い手には、詳しい製品情報に加えて、自社に合うかを判断し、関係者へ説明するための材料も必要になります。

出典:6sense「Buyer Experience Report 2025」/株式会社サイバーエージェント GEOラボ「生成AIのユーザー利用実態調査」「同 第三弾」(2025年5月/2026年2月調査)/株式会社マツリカ「Japan Sales Report 2022」(2022年5月調査)/株式会社IDEATECH「日本のBtoB大型購買プロセスに関する実態調査」(2026年3月調査)

コンテンツの価値は、「教える」と「助ける」に分かれていく

コンテンツ価値の二極化。相対的に価値が下がりやすい「教える」コンテンツ(「○○とは」解説記事、一般的なノウハウ集=AIが要約してしまう領域)と、相対的に価値が上がりやすい「買い手の仕事を助ける」コンテンツ(比較・選定軸、費用対効果(ROI試算)、社内説明用の要約資料、導入ステップ・リスク整理)。分ける問いは「買い手の仕事を助けるか」。左側が不要になるわけではない

AIの時代にコンテンツの価値が一律に下がった、という見方があります。プロレクトの Research #02 では、AI時代のコンテンツの価値を、「AIが代わりに作れるか」と「買い手の意思決定を前へ進めるか」の2つの軸で整理しました。この記事では、それを「教える」と「助ける」の二極として見ます。調査の結果そのものではなく、設計のための整理です。

「○○とは」を教える一般的な解説は、AIで代わりが作られやすい側にあります。認知の入口として不要になるわけではありません。一方、比較する、判断する、社内を説得する、といった買い手の仕事を、自社の条件に当てはめて助ける材料は、代わりが作られにくい側にある、と私たちは考えています。分ける問いはひとつ、買い手の仕事を助けるか、です。

手がかりになる調査もあります。年間契約金額500万円以上の業務ソフトウェア・SaaS、ITインフラ・セキュリティ商材の購買に2名以上で関わった人への調査(2026年5月・直近12か月で最大金額の案件について・各設問325人・複数回答)では、判断材料として助かったコンテンツの1位が「ROI計算シミュレーター・投資対効果の試算ツール」(55.4%)でした。別の設問では、ベンダーとの接触時やそれ以降に「購買判断にほとんど影響しなかったもの」として、46.2%が「機能比較表(自社製品 vs 競合)」を挙げ、営業に会う前に判断が難しかった項目の1位は「導入後の運用負荷の見積もり」(56.3%)でした。設問はそれぞれ別で、3つの項目の優劣を比べた調査ではありません。

ここでいう比較は、機能の○×表ではなく、自社に合うかを判断する軸のことです。比較資料の作り方は、比較検討コンテンツの記事で詳しく扱っています。

ここまでをまとめると、「情報提供」から「意思決定支援」へ、です。言い換えると、買い手の社内の仕事を助けるコンテンツを作る、ということです。

出典:Prollect Research #02「AI時代のBtoB購買行動レポート」/株式会社IDEATECH「【第2弾】日本のBtoB大型購買プロセス調査」(2026年5月調査)

何を作るかは、買い手の6つの仕事から決める

買い手が進める、6つの仕事。課題認識・解決策探索・要件定義・比較・社内合意・発注と、それぞれを助けるコンテンツの例(課題啓発の記事・WP、ノウハウ・事例、要件整理の材料、比較・選定軸、ROI試算・稟議資料、導入ステップ)。流行から決めるのではなく、止まっている場所から決める

流行っているからウェビナー、というのは順番が逆です。この記事では、買い手の購買の仕事を6つに分けて扱います。課題に気づく、選択肢を探す、要件を決める、比較する、社内を通す、発注する、の6つです。Research #02 で使った Gartner の6つの購買ジョブをもとに、自社のコンテンツを並べやすいように言い換えたものです。

ホワイトペーパーかウェビナーかは、形式の話です。先に決めるのは、どの仕事を助けるか。それを決めるのは、お客様がどこで止まっているかです。

ここから、架空のSaaS企業で3ステップを実際にやってみます。各ステップの最後に、自社で書いてみる問いを置きました。

ステップ1 現状を見る

説明のために仮に置いた、架空のSaaS企業のひと月の数字です。段階は、自社の導線に合わせて置き換えてください。

段階件数(月・架空例)前の段階からの転換率
資料ダウンロード・問い合わせ100-
商談1010%
受注110%

商談では、商品への評価も高い状態です。それでも受注は1件です。停滞している商談からは、こんな声が聞こえてきます。

  • 「社内で検討します」
  • 「他社との違いを、上司に説明できない」
  • 「費用対効果を、社内で説明できない」

数字だけでは、どこで止まっているかは決められません。数字と買い手の声を合わせて、リード獲得でも商談化でもなく、商談の後に買い手が社内で検討を進める場面が止まっている、という仮説を置きます。止まっている場所が商談化の手前にある会社では、同じ手順で別の答えになります。

自社で書く: 買い手が止まっていると考えられる言葉や行動を3つ。営業に聞くか、問い合わせ内容・商談メモ・失注理由の記録から拾ってください。

ステップ2 持ち物を並べる

次に、この会社のコンテンツを、6つの仕事の上に並べます。どの列に置くかは、資料の種類ではなく、買い手がそれをいつ使っているかで決めます。同じコンテンツが複数の仕事を助けることもあります。

課題認識解決策探索要件定義比較社内合意発注
用語解説記事課題啓発WP・ノウハウ導入事例(空白)(空白)製品資料

この会社では、導入事例は要件を固める場面で読まれていたので、要件定義に置きました。コンテンツは課題認識から要件定義に偏り、比較と社内合意が空いています。発注のところには製品資料がありますが、自社の説明が中心で、他社と比べる、上司に説明する、費用対効果を示す、といった買い手の社内の仕事には、そのままでは使えません。

止まっている場所である比較と社内合意に足りないものは、4つです。比較・選定軸、上司共有用の要約、費用対効果、導入リスクと対策。買い手は、社内で使える材料がないまま「社内で検討します」と言って止まっていた、という見立てになります。

自社で書く: 自社のコンテンツを6つの仕事に並べたとき、空いている場所と、そこに足りないもの。

この作業に使ったのが、ウェビナーの特典の「購買プロセス×コンテンツ棚卸しシート」です。この記事と同じ3ステップに沿って、記入例と自社用の欄があります(ウェビナーの申込後、メールでお届けします)。

ステップ3 最初の1本を決める

空白は4つですが、一度に全部は作れないので、最初の1本を決めます。候補を3つの軸で、各1〜3点(3=強く当てはまる)で採点します。

  • A 止まっている場所に近いか:ステップ1・2で見つけた止まっている場所を、直接助けるか
  • B 商談・受注への距離が近いか:検討の後期を助けるほど高く出ます
  • C 短期間で実装できるか:いまある素材(営業が口頭で説明している内容など)で作れるか

架空の記入例です。

施策の候補ABC合計メモ
① 新しいノウハウWP1124新規DLには効くが、今回の停滞には効かない
② 入門ウェビナー1124課題理解には効くが、社内説明につながりにくい
③ 導入事例の追加2237安心材料になるが、比較・費用対効果は補えない
④ 社内検討を進める 比較・費用対効果ガイド3339停滞理由に直接対応。営業の口頭説明を素材にでき、着手しやすい

この会社の最初の1本は、社内検討を進める比較・費用対効果ガイドです。営業が商談で口頭説明している情報を素材にできるので、ゼロから集める情報は少なくて済みます。ただし、比較に使う事実と根拠は、公開前に確かめます。

これは、商談の後が止まっている今回の例での採点です。止まっている場所が課題認識や解決策探索にあれば、ノウハウWPや入門ウェビナーの軸Aの点数が上がります。軸Bは後ろの段階ほど高く出やすいので、止まっている場所が前のほうにあるときは、軸Aを重く見てください。大事なのは「比較資料を作る」という答えではなく、現状の数字、買い手の停滞理由、既存のコンテンツを並べて決める、という順番です。点数は、社内で議論するための目安です。

事業責任者の方に確認してほしいのは、3つの軸のどれを重く見るか、最初の1本、そして着手する範囲です。

自社で書く: 空白を埋める候補を3つ挙げ、A・B・Cで採点した結果と、最初の1本。

3問で、自社の現在地を確かめる

基準は厳しめにします。30秒で口頭説明できたら「はい」です。

  1. お客様の購買プロセスを、段階で描けますか
  2. 各段階に対応する自社コンテンツを言えますか
  3. 比較、社内説明、稟議を助けるコンテンツがありますか
  • 「はい」が0〜1個:まず購買プロセスを描いて、何から作るかを決めます
  • 「はい」が2個:棚卸しをして、空白を埋める1本を決めます
  • 「はい」が3個:既存のコンテンツが実際に使われているか、今どこで止まっているかを確かめます

どの場合も、最初の一歩は同じです。この一文を埋めてください。

自社で商談が止まるとき、買い手から出る言葉は「______」。

この一言が、どこで止まっているかを考える出発点になります。

棚卸しシートで、自社の1本を決める

特典は2点です。「購買プロセス×コンテンツ棚卸しシート」(Excel)は、この記事の3ステップに沿った記入例と自社用の欄があり、転換率やメモの欄も付いています。もう1点の「稟議3点セット」は、社内を通す仕事を助ける資料の見本です。

ウェビナー本編では、架空の会社の表が埋まっていく順にお見せしています。お申し込みいただくと、視聴URLと一緒に特典2点をメールでお届けします。

無料で視聴を申し込む

状況によっては、次の選択肢もあります。

  • 作るものはもう決まっていて、そのコンテンツが受注までのどの判断を動かすか見当を付けたい:受注導線診断(7問・無料)。Webで約3分、送信は不要です
  • まず、自社の止まっている場所を一緒に見たい:無料相談で、受注導線の論点を一緒に整理します
  • ペルソナとカスタマージャーニーから、次の90日で何をどの順で作るかまでを2〜3週間で一緒に決めたい:プロレクトの「受注導線コンテンツ設計」