プロレクト代表の武田です。

2026年5月、GW最終日の夕方。いつものように Search Console を開きました。

ただ、その日はいつもと違いました。

直近28日間の検索クリック数は、前月比で 約63%減。表示回数も 約56%減

一瞬、見間違いかと思いました。ただ、期間を変えて見ても、記事別に見ても、落ちている事実は変わりませんでした。

大きな要因は、自社オウンドメディアで進めていた AI 生成記事の量産でした。

もちろん、AI を使ったこと自体が悪かったとは思っていません。ただ、私たちの使い方、記事の増やし方、サイト全体の設計には、明らかに判断ミスがありました。

この記事では、何を間違えたのか。どこでコンテンツの役割が曖昧になったのか。そして、いま何を立て直そうとしているのか。データも、判断プロセスも、できる限りそのまま書きます。

AI で記事を増やそうとしている方、オウンドメディアを商談・受注につなげたい方が、同じ失敗を避けるための材料になればと思います。

AI生成記事を量産した結果、何が起きたのか

落ちた数字を、まず分解した

リードで触れた「直近28日で前月比 -63%」は、Search Console を開いた瞬間に目に入った数字でした。ただ、短期の数字はブレが大きいので、まず期間を伸ばして見直しました。

私たちが運営する「BtoBマーケティング教科書」(btobmarketing-textbook.com)の、直近3ヶ月(2026年2月7日〜5月6日)と、その6ヶ月前の同じ3ヶ月間(2025年8月8日〜11月7日)を並べると、こうなっていました。

668 → 252
クリック合計(-62.3%)
224,904 → 98,382
表示回数合計(-56.3%)

期間を変えても、落ちている事実は変わりませんでした。短期のノイズではなく、もっと根本的な何かが起きている、というのが見ながら持った感覚です。

次に切り分けたのは、サイト全体の問題か、特定の記事の問題か、という点です。ページ別に並べ替えると、下落は特定の記事群に偏っていました。サイト全体が均一に落ちたのではなく、いくつかの記事の流入が大きく失われた結果として、合計の数字が崩れていた。

これは、対処の優先順位を考えるうえで意味のある事実でした。サイト全体の評価が均一に落ちたなら打ち手は限定されますが、特定の記事構造の問題なら、まずそこから手を入れられます。

落ちていた記事には、共通点があった

下落幅の大きい記事を並べてみると、傾向ははっきりしていました。

「BtoBマーケティングとは?」「ホワイトペーパーとは」「ウェビナーとは」──こうした典型的な解説記事です。加えて、「あ」から始まる用語、「い」から始まる用語、というふうに50音順に並べた用語解説シリーズも、同じように下がっていました。いずれも、サイト名の通り「教科書」としての土台になると考えて作っていた記事群です。

一方、「BANT vs MEDDIC」「ホワイトペーパー vs 営業資料」のような、実務的な比較・選択を扱う記事は、流入を維持していました。むしろ伸びている記事もありました。同じサイト内でも、検索ユーザーが選ぶ記事と選ばない記事が、明確に分かれていた、ということです。

この対比から立てた仮説は、シンプルでした。サイト全体で「概念を解説する」記事と「実務的な判断を支える」記事が混在しているなかで、前者の役割が、検索結果の中で薄くなっているのではないか。一本一本の記事の良し悪しというより、サイトとして「何を提供する場所なのか」がぼやけていたのかもしれない。

順位が維持されていても、クリックは減っていた

もうひとつ、当時の検証で引っかかった事実がありました。順位が維持されている、もしくは改善している記事まで、クリックが減っていた ことです。

通常、検索順位とクリック数はある程度連動します。順位が上がればクリックも増え、下がれば減る。ところが今回はそうではなく、連動が崩れていました。順位が10位から5位に上がっているのに、クリックが半減している記事もありました。

検索結果の上のほうには、いまや「AI による要約」が表示されることが多くなっています。多くの場合、ユーザーはその要約を読んで満足し、リンクをクリックしなくなる。私たちの記事でも、近いことが起きていたのだと思います。

ただ、ここで本当に向き合うべき問題は、その先にありました。順位はあっても、ユーザーが私たちの記事を選んでいない。要するに、その一点に集約される話でした。

検索結果には、AI の要約も、競合のスニペットも、関連質問も並びます。ユーザーはそのなかから「自分の問いに最も合うものは何か」を選びます。順位が良くても、「ここを開いて読む価値」が他より低ければ、クリックは付きません。

私たちの解説系の記事は、その選別から外れていました。一般的な定義や概要は、検索結果のなかで別の方法で完結する時代になっていて、「わざわざクリックして読む理由」を作れていなかった、というのが、いまの私の解釈です。

ここまでで見えたのは、「Google にペナルティを受けた」のではなく、サイトの作り方そのものを見直す必要がある ということでした。ただ、なぜそういう作り方をしてしまったのか。少なくとも当時の私は、そう作ることが正しいと思って進めていました。次の章では、当時の判断を、いまの結果論ではなく、当時の合理性のままに 振り返ります。

検索流入が落ちた原因──当時はなぜ正しいと思っていたのか

前章で見えたのは、サイトの作り方そのものを見直す必要があるという事実でした。ただ、いま振り返れば当然そう見える判断ミスも、当時の私には「合理的に見えた手順」を踏んだ結果でした。本章では、なぜそういう作り方を選んだのか、当時の前提のままに整理します。

自動投稿を始めた経緯

AI 生成記事の量産フローを動かし始めたのは、2025年後半から2026年初頭にかけてでした。狙いはふたつあります。

ひとつは、プロレクトの認知を広げることです。創業して間もない会社が、BtoB マーケ領域で検索流入の土台を作るには、関連トピックを網羅した記事をある程度の本数で出す必要がある、と考えていました。指名検索だけでは事業の入口は広がらない、という判断です。

もうひとつは、AI で少人数でもコンテンツを増やせるはずだ、という期待でした。ChatGPT や Claude の出力品質が、ある時点から「整えれば公開可能」なレベルに見えてきていたのは事実だと思います。テーマリストを作り、AI に構成案と本文ドラフトを生成させ、整形して投稿する。この一連のフローが回ったとき、自分のなかで「これで小さくても継続的に発信できる」と感じていました。

当時の競合状況も、この判断を後押ししました。BtoB マーケ領域のメディアを見ていると、各社が SEO 記事を大量に出しているように見えていました。 「質も大事だが、まずは面を取る必要がある」 というのが、その時点での私の判断だった、という意味です。

ペースは1日2記事、月にすれば60本。これも「最低限、検索評価の土台を作るうえで必要な本数」というのが、当時の自分のなかでの整理でした。

いま振り返れば、この前提のいくつかが BtoB マーケ領域では成立しない、もしくはもう成立しない時期に入っていたのですが、当時の意思決定としては、それなりに筋が通っていたつもりではいました。

「○○とは?」系を量産した理由

増やす対象として最初に選んだのが、「BtoB マーケティングとは?」「ホワイトペーパーとは」「ウェビナーとは」のような、概念解説系の記事群でした。

理由は3つあります。

ひとつは、検索ボリュームが一定以上あったこと。キーワード調査を行うと、これらの語は安定した検索数があり、初心者層の入口として機能しそうに見えました。「BtoB マーケに関わる人がはじめて検索する語」を網羅すれば、サイト全体の入口が太くなるはずだ、という発想です。

ふたつめは、サイト名との相性です。私たちのサイト名は「BtoBマーケティング教科書」。「教科書」と冠している以上、用語や概念をきちんと押さえた記事群があるべきだろう、という判断は、いま振り返ってもそう不自然ではないと思います。

みっつめは、初心者導線としての位置づけです。BtoB マーケの実務者になったばかりの人が、自分の言葉で言語化できていない概念を検索する場面はあります。そこに自社が答えを置けば、サイトの入口になり、その後の記事へ誘導できる。そう考えていました。

ただ、ここで甘く見ていたのが、検索結果の上に「AI による要約」が並ぶ時代になっていた、という事実です。「○○とは?」に対する一般的な説明は、いま検索結果の中で完結しやすくなっています。クリックしなくても答えが手に入るなら、ユーザーがわざわざ私たちの記事を開く理由は減ります。

その上、自分の記事も「AI で答えられる範囲」に収まっていました。一般的な定義、概要、メリット・デメリット、進め方の概略。教科書として最低限正しい構成です。ただ、それは検索ユーザーが私たちのサイトを選ぶ理由にはなっていませんでした。

つまり、入口になると思っていた記事群が、入口になる前に通り過ぎられていた、というのが、結果として起きていたことでした。

用語辞典シリーズの構想

もうひとつ、結果的に大きく外れた施策が、50音順の用語解説シリーズでした。「あ」から始まる用語、「い」から始まる用語、というふうに、BtoB マーケで使われる用語を網羅していくシリーズです。

これも、当時の発想としては筋が通って見えていました。

「BtoB マーケの用語辞典を作れば、ロングテールで安定した流入が積み上がるはずだ」。これがスタート地点でした。1本あたりの検索ボリュームは小さくても、本数が積み上がればサイト全体としては資産になる、という考え方です。実際、SEO の文脈ではこの設計でうまくいっているサイトもあります。

当初の構想では、50本以上、場合によっては100本近くまで広げる想定で動かし始めました。最終的には33本まで作ったところで一度立ち止まる判断をしましたが、走り出したときの構想は、それなりに大きいものだったということです。

作っている最中の手応えとしては、「前に進んでいる感」がありました。ファイルが増え、記事一覧が縦に伸び、サイトとしての厚みが視覚的に増していく感覚です。1日2本のペースとも噛み合い、「進捗がある」と感じやすい施策でした。

ただ、いま正直に書くと、それは 「前に進んでいる感」であって、「読者にとっての価値が増えている感」ではなかった と思います。サイト内で「概念を解説する」記事ばかりが太っていく一方で、それが誰のどんな検討を進めるための記事なのか、という問いは、私の側からは言語化されないまま走っていました。

カニバリのリスクは、当時も認識はしていました。ただ、実際の影響の大きさを、かなり軽く見ていました。「BtoB マーケティング 用語」「マーケティング 用語」「ホワイトペーパー 意味」「リード獲得とは」のような、近い検索意図の記事がサイト内で重なっていく状況に対して、「全体としては網羅性が出ているはず」と整理してしまっていた、というのが正確な振り返りです。

結果として、Google から見ても、検索ユーザーから見ても、「このサイトは何を一番伝えたいのか」がぼやけたのだろう、と思います。

振り返って思うこと

ここまでに書いた3つの判断──自動投稿のペース、「○○とは?」系の量産、50音順の用語シリーズ──は、それぞれ単独で見れば、当時の前提では筋の通る判断でした。検索ボリュームに沿ってテーマを選び、サイト名と整合した記事を書き、ロングテールで資産を積む。教科書を名乗るオウンドメディアとしては、極端に外れた設計ではなかったはずです。

それでも、結果として、サイト全体は「読者がクリックする理由」を作れない方向に進んでいました。

いま振り返って一番悔やんでいるのは、いつのまにか、 記事を公開すること自体が目的になっていた ことです。

本来であれば、記事は「読者のどんな検討を進めるためのものか」「商談・受注のどこにつながるものか」という目的の手段であるはずです。ところが、1日2本のペースを回すうちに、いつのまにか「今日の2本を出す」こと自体が日々のゴールになっていました。テーマ選定も、構成も、本文も、その目的に最適化されていく。検索評価の土台を作るための量産だったはずが、量産そのものが目的にすり替わっていた、ということです。

その結果として、私たちのサイトには 「AI で作れる記事」が積み上がっていきました。AI を使うのが悪かったのではなく、「AI でも作れる範囲」に自分たちのコンテンツを置いてしまったことが、本質的な問題でした。本当に作るべきだったのは、 AI だけでは書けない記事 です。実体験、判断、葛藤、固有の数字、そして「誰のどんな検討を助けるか」という意図。これらが入っているコンテンツを、まず先に置くべきでした。

H2-1 で立ち上げた「概念解説 vs 実務判断」の対比は、ここに直結します。AI で書ける領域、つまり概念解説の側に偏って投資し続けたために、実務判断を支える側のコンテンツが薄いままだった。これが、サイト全体の役割をぼやかした構造的な原因だったと、いまは整理しています。

次の章では、ここで言葉にした3つの判断について、手元のデータで何が見えたのかを整理します。

データで見えた、3つの判断ミス

H2-2 で言葉にした3つの判断──自動投稿のペース、「○○とは?」系の量産、50音順の用語辞典シリーズ──について、現状把握フェーズで実際に何が見えたのかを書きます。データの数字をすべて並べるのではなく、それぞれの判断について「いま振り返ると、ここに兆候が出ていた」という観点をひとつずつ整理します。

ミス1:1日2記事・月60本というペースが、選別を奪っていた

まずペースの話から始めます。

1日2記事、月60本というのは、半年で360本ペースの設計でした。実際にこのペースで動かしていたのは2025年後半から2026年初頭にかけてで、結果として、自社サイトの公開記事はその期間で大きく増えました。

データを並べてみると、ペース自体の問題というより、ペースの中で 記事ごとの選別が抜け落ちていた ことが見えました。1本あたりの平均文字数は5,000字を超えており、文字数だけで見れば「薄い記事」とは言えない。一方で、テーマ選定の偏り、見出し粒度のばらつき、想定読者の解像度の差は、後から並べると、はっきり見えていました。

つまり、「ペースに合わせてテーマリストを埋める」運用になっていた、ということです。本来であれば、1本ずつ「この記事は誰のどんな検討を進めるのか」を立て直してから書くべきところを、リストを早く埋めることのほうにコストが寄っていた。H2-2 で書いた「公開することが目的になっていた」という状態は、データを並べると、テーマ選定の段階ですでに始まっていたのが見えてきます。

ミス2:「○○とは?」系の記事は、順位が上がっても、クリックが消えていた

ふたつめは、概念解説系の記事のクリックの動きです。

過去3ヶ月でクリックが完全にゼロになった記事のうち、特徴的だったのは、順位が大きく改善しているのにクリックが消えている記事群でした。

33.7位 → 5.9位
アンゾフの成長マトリクスとは?(順位)/クリックは 18 → 0
33.6位 → 9.3位
OODAループとは?(順位)/クリックは 11 → 0
8.3位 → 2.9位
マーケティング用語「せ」(順位)/クリックは 13 → 0

通常であれば、3桁台の順位から1ページ目に上がった時点で、クリックは何倍にも伸びるのが普通の挙動です。ところがこれらの記事では、Google 側の評価は上がっているのに、ユーザー側の選択は逆方向に動いていました。

データから言えるのは、Google が悪く評価したわけではない、ということです。むしろ評価は良くなっていた。それでも、検索結果の中で「読者がここを開いて読む価値」が他より低いと判断されていた。「○○とは?」型の問いに対する答えは、検索結果の中で別の方法で完結する時代になっており、順位の上昇が読者のクリックに直結しなくなっていた、というのが私たちのデータからの解釈です。

ミス3:50音順用語辞典シリーズが、サイトの主張をぼやけさせていた

みっつめは、用語辞典シリーズの構造的な問題です。

33本まで作った段階での状況を、データで並べると次のとおりでした。

約 152,000字
シリーズ合計文字数(1本あたり平均 約4,600字)
200本超
シリーズ内のカニバリペア(類似度0.5以上)
0.882
同シリーズ内で観測された最大類似度
90 → 32(-64%)
シリーズ全体の検索流入推移

数字として印象的だったのは、類似度0.882 という水準です。タイトルと見出し構造から計算した類似度なので、実態としては「あ」と「い」の記事が、検索エンジンの目から見るとほとんど同じ役割をしている、という意味になります。これが、シリーズ内で200本以上のペアで観測されていました。

ここで起きていたのは、単に個別記事のクリックが少ないという話ではありませんでした。サイト全体として「このサイトは何を一番伝えたいのか」が、検索エンジン側からも、読者側からも、見えにくくなっていた ということです。33本それぞれは独立したテーマのつもりで作っていましたが、外から見ると「同じ役割の記事が大量にある」サイトに見えていた。

このシリーズが占めていたのは、サイト全体の記事数のうち約1割。割合としては多くないように見えますが、それが、サイトの主張を薄めるリスクとして全体に効いていた、というのがデータからの解釈です。

3つのデータに共通していたこと

3つのミスを別々に検証していくと、最後に共通する事実に行き着きました。

いずれも、単発の記事の問題ではなく、サイト全体の設計の問題として現れていた ということです。ペースが速すぎたから記事の選別が抜けたのではなく、サイトとして「何を提供する場所なのか」を決め切れていなかったから、ペースの中で選別が機能しなかった。「○○とは?」系が AI に飲まれたのではなく、サイトとして「自社で答えるべき問い」を絞れていなかったから、AI でも答えられる範囲のコンテンツが増えていた。用語辞典シリーズが共食いを起こしたのではなく、シリーズを置く意味そのものを言語化できていなかったから、結果として共食いが起きていた。

データを並べると、構造の問題のほうが先にあって、それぞれの判断ミスは、その構造から派生した症状だった、という見え方になります。

次の章では、ここまでで見えた構造の問題に対して、私たちが何を止血し、何を再設計しようとしているのかを、判断軸の表とともに書きます。

検索流入減少からの止血と再設計プロセス

H2-3 で見えた「構造の問題」に対して、私たちが手元で動かしている対応を書きます。前半は「いま流入が落ち続けないようにする止血」、中盤に判断軸を整理した表、後半は「サイトを長期的にどう作り直すか」の再設計、という構成です。

止血フェーズ:まず守りを優先する判断

最初にしたのは、「攻め」よりも「守り」を優先する、という方針判断でした。

順位の戻し方や新しい記事の作り方を考えるよりも先に、サイト全体の評価が下がり続ける流れを止めることが先だと判断したからです。サイトの土台が崩れている状態で新しい記事を積んでも、その記事まで一緒に評価を下げかねない。攻めの設計はその後にしか効かない、というのが、3つの判断ミスを並べたあとの整理でした。

具体的に動かしたのは、3つの止血です。

38記事の noindex 適用

ひとつめは、流入の見込みが薄く、かつ受注導線にも貢献していない38記事を、検索結果から外す(noindex 化する)判断です。対象は、用語シリーズ33本と、過去にクリックを集めていたが現在ほぼゼロになっている概念解説系の5記事です。

正直に書くと、これは心理的にはかなり抵抗のある判断でした。1本あたり数千字、合計で15万字を超える原稿を、検索の対象から外すことになるからです。「それなりに時間をかけて作ったものを消すのか」という気持ちは当然あって、即決ではありませんでした。

それでも noindex を選んだのは、これらの記事が 「サイトの主張をぼやかす重し」として効いている という、データからの結論があったからです。残しておいてもサイト全体にネガティブな影響が続くなら、いったん検索結果から外して評価を整えるほうが筋が通る。記事自体は削除せずに残し、後で統合するなり、書き直すなりの判断を取り戻せる状態にしておく、という選択でした。

自動投稿の停止

ふたつめは、AI 生成記事の自動投稿フローを止めたことです。

これも、止めること自体に葛藤がありました。自動投稿の仕組みは、自分のなかでは「未来感のある運用」でもあって、止めてしまうと、そこに投じてきた設計やコードがいったん使われなくなります。続けたい気持ちが普通にあった、というのが正直なところです。

ただ、ペースを止めずに止血を進めるのは無理だ、と判断しました。テーマ選定の段階から「公開を目的にしない」運用に組み替える必要があり、そのためには、いったん自動運用そのものを止めて、組み立て直すほうが早い。短期的には記事数の増加は止まりますが、増やすために続けてきた運用が結果として評価を下げているなら、止める方が事業にとっては正しい という整理でした。

用語シリーズ統合の判断

みっつめは、50音順の用語辞典シリーズについて、個別記事を残し続けるのではなく、統合する方向で動かすという判断です。

統合は、いま実装を進めている段階です。「BtoB マーケティング用語集」として親ページを1本立て、必要な用語はその中に残す。残さない用語、もしくは独立した記事として書き直すべき用語は、個別に判断する。効果検証はシリーズ第5弾で改めて公開する予定です。

統合を選んだ理由は、シリーズが資産として機能していなかったわけではない、と思ったからです。ただ、いまの形では、サイトとして主張がぼやけ、ユーザーから見ても情報が分散しすぎている。1本にまとめれば、辞典としての網羅性は維持しつつ、サイト全体の主張は整えられる。攻めに転じるよりも先に、いったん持っているものを整える、という判断でした。

判断軸を表にする:何をどう扱うか

止血を進めながら、サイト全体の記事をどう扱うかの判断軸を整理しました。一覧にすると次のとおりです。

見直し対象判断理由
用語辞典33本統合・一部 noindex検索意図が重複していた
AI 生成記事(該当 38本)noindex受注導線上の役割が薄かった
「○○とは?」記事リライト or 統合AI Overviews で完結しやすい
実体験記事強化独自性が出しやすい
受注導線記事強化・拡充商談・受注に直接寄与する

この表が示しているのは、すべての記事を一律に扱うのではなく、役割と独自性で扱いを分けた ということです。検索意図の重複があれば統合、受注導線に貢献していなければ noindex、AI でも答えられるテーマならリライトか統合、書き手の独自性があれば強化、商談・受注に直接寄与するなら強化・拡充。この5つの方針に整理しました。

ここで効いたのは、判定軸を「クリック数」ではなく「記事の役割」と「クエリの性質」に変えたことでした。クリック数だけで切ると、AI Overviews 時代には間違った判断をしやすい。順位は良いのにクリックが消えていた、という H2-3 の事実が、判定軸の変更につながっています。

再設計フェーズ:受注導線という視点を入れる

止血と判断軸の整理が終わったあとに、「これからどんなサイトにするか」の再設計に入りました。

ここで持ち込んだのが、私たちが事業として提供している 「受注導線設計」の視点 です。

オウンドメディアの記事を、単体の作品としてではなく、読者の検討プロセスの中でどんな役割を担うコンテンツか という観点で位置づける。情報収集フェーズに刺さる記事、比較検討フェーズで判断を支える記事、社内検討フェーズで稟議や合意形成の素材になる記事──こういう役割で記事を見るようにしました。

そう見直してみると、これまで作ってきた「○○とは?」系の記事は、情報収集フェーズの一番上に置くべき記事ではあったものの、その後の検討プロセスにつながる導線がほぼ設計されていませんでした。それぞれの記事が独立しすぎていて、読み終えたあとに次に何を見ればいいのかが、サイト側から提示されていなかった、ということです。

リライト基準も、「単純なクリック数」ではなく「そのクエリが受注導線につながるか」を最初に見るように変えました。

たとえば、

  • 「ホワイトペーパーとは」── AI Overviews で完結しやすく、受注導線への接続も間接的なため、強化対象から外す
  • 「ホワイトペーパー 商談につながらない」── 検討プロセス上の具体的な悩みを扱っており、Prollect の支援領域とも直結するため、リライトを優先する

という線引きです。

ここまでで何が変わったか

止血と再設計を並行で動かすうちに、サイトをどう運用していくかの方針も、自然と変わっていきました。

ペースを「1日2記事」から、自動公開なし・週1〜2本の制作体制へ。テーマ選定を、検索ボリューム起点から、受注導線上の役割起点へ。記事制作のフローも、AI に最終稿まで任せる方式から、骨子段階で判断を立て直し、実体験を必ず重ねる方式へ。

これは単なる作業の変更ではなく、サイトとして提供する価値そのものを置き直す動きでした。AI を使うペースだけを下げたわけではなく、AI で作れる範囲のコンテンツを増やすこと自体を止めた、という整理が、自分のなかでは近い表現です。

ここまでが手元の止血と再設計です。次の章では、この経験を経て見えた、コンテンツマーケの本当の論点について書きます。

失敗から見えた、コンテンツマーケの本当の論点

ここまで書いてきた失敗の経験から、私たちが向き合うべき論点として整理しているのが、3つあります。これは「コンテンツマーケ全般の正解」というより、私たちが自社で起こしたことから見えてきた、自分たちなりの整理 です。

論点1:単発の記事ではなく、サイト全体の役割が問われる

ひとつめは、コンテンツマーケで結果を分けるのは、単発記事の出来そのものよりも、それらが集まったときにサイトとして何の役割を担っているか だということです。

私たちの経験に照らすと、1本ずつの記事は教科書として最低限正しい構成で書いていたつもりでした。それでも、サイト全体としては「ここに来る理由」が薄れていた、というのが自分たちの実感です。サイトとして「何を提供する場所なのか」が決まっていない状態で記事を増やしても、増やすほど主張は分散していく。読者からも、検索エンジンからも、「このサイトに何を期待していいか」が見えにくくなる。これは、自社で実感するまでは、ここまで効いてくる論点だとは思っていませんでした。

論点2:「公開すること」自体がゴールになりやすい構造

ふたつめは、コンテンツ運用は、放っておくと 「公開すること」自体がゴールになりやすい ことです。

ペースを決めて運用していると、テーマ選定も、構成も、本文も、そのペースを満たすことに最適化されていきます。1日2本というペースの中で、「今日の2本を出す」ことが日々のゴールになっていた、というのが私たちの自己観察です。本来であれば、記事は読者の検討を進めるための手段だったのに、いつのまにか公開回数を満たすこと自体に最適化されていた。

これはペースが速いから起きたというより、運用設計のなかに 「何を達成したら成功か」を、公開数以外で持っていなかった ことが効いていたと思います。記事の役割を運用フローの中で問い続ける仕組みがなければ、AI の有無にかかわらず、似た現象は起きうると感じています。

論点3:AI で書ける範囲を超えたコンテンツを、定義し続ける

みっつめは、AI で書ける範囲を超えたコンテンツとは何かを、自社の中で更新し続ける必要がある ということです。

これは AI を否定する話ではなく、AI のほうが速く正確に書ける領域は今後さらに広がっていく前提で、自社のコンテンツをどこに置くかの話です。私たちのケースで言えば、「○○とは?」「進め方の概略」「メリット・デメリット」のような領域は、AI でも作れる範囲でした。そこに自社のコンテンツを置いていた限り、サイトの存在理由を説明できなかった。

逆に、流入を維持していた記事──「BANT vs MEDDIC」「ホワイトペーパー vs 営業資料」のような記事──には、現場の経験や判断軸、固有の比較が入っていました。AI でも書ける範囲ではなく、書き手の経験を経由しないと書けない範囲。私たちの整理では、ここに置くべきコンテンツの定義があります。

共通していること

3つの論点に共通しているのは、記事を増やすことから始めるのではなく、もっと前の段階から設計し直す必要がある、ということです。次の章では、私たちが新しい記事を作るときに、いま実際に何から始めているのかを書きます。

AI で記事を増やす前に、受注導線を設計する

H2-5 で書いた3つの論点に共通して見えていたのは、記事を増やす段階より前に、サイトとして何を提供するか・どこに誰を運ぶかを設計しておく必要がある、ということでした。私たちはこの段階の作業を 「受注導線設計」 と呼んでいます。本章では、その設計が記事制作の現場にどう降りてくるのか、いま私たちが手元で動かしていることを整理します。

受注導線設計とは何か(私たちの整理)

私たちが「受注導線設計」と呼んでいるのは、ざっくり書けば、読者の検討プロセスを段階に分けて、各段階に置くべきコンテンツを決める 作業です。

私たちが共通言語として使っている検討プロセスは、 課題認識 → 情報収集 → 比較検討 → 社内検討 → 発注判断 という5段階です。BtoB の購買は、まず「何かが課題かもしれない」という気づきから始まり、情報を集めて課題を解像する段階を経て、手段を比較し、社内で合意を作り、最後に発注判断に至る──この流れの中で、それぞれの段階の読者に対して、自社のコンテンツが何を提供するかを決めていきます。

ここで重要なのは、記事を単体の作品ではなく、検討プロセスの中の役割として置くこと です。1本の記事には、入り口の機能・つなぎの機能・決め手の機能のいずれかが必ずある。役割が決まっていないと、記事は良く見えても、サイトとしての導線にはなりません。

H2-2 で書いた「公開することが目的になっていた」という状態は、この設計が抜けているとほぼ必然的に起きる、というのが私たちの整理です。

記事を作る前に、決めていること

新しい記事を作るときに、いま私たちは、本文を書き始める前に4つのことを決めるようにしています。

  1. 誰の記事か ── 検討プロセスのどの段階の、どんな立場の読者か
  2. 何を進める記事か ── その読者の検討を、どの方向に、どこまで進めるか
  3. 何で差別化するか ── AI でも書ける範囲ではなく、自分たちの経験のどこを乗せるか
  4. どこに着地させるか ── 読み終わったあと、何の判断材料を持って帰ってほしいか

この4つが言語化できないテーマは、その時点で着手しない判断にしています。すべてが完璧に埋まる必要はないものの、空欄が2つ以上あれば、骨子を組み直すか、テーマ自体を見送る、という運用です。

これは「事前のチェックリスト」というより、書き始める前に立ち止まる仕組み に近い意味合いです。1日2記事のペースで動かしていた頃は、ここを通過する時間がありませんでした。週1〜2本に絞ったのは、この4つを毎回検証するための時間を確保する、という意味でもあります。

いま、私たちがやっていること

記事制作のフローも、AI に最終稿まで任せる方式から組み替え、いまは次のような流れで動かしています。

  • 私が、4つの問いを使ってテーマを判断する
  • AI に骨子と一次ドラフトを生成させる
  • 骨子段階で、 実体験・判断・葛藤・固有の数字 を必ず重ねる
  • 本文を書き上げたあと、もう一度4つの問いで自分でチェック
  • 4つに答えられない記事は公開しない

これによって、記事の本数は確実に減りました。1日2本のペースに戻すつもりもありません。それでも、書いた記事の役割が、サイト全体の中で見えるようになってきています。

私たちにとっての変化は、AI を使う量や速度ではなく、AI に何を任せ、自分は何を握るか という線の引き直しでした。AI には実行と整理の速度を任せ、自分は判断・経験・受注導線の設計を握る。これが、いま手元で動かしている運用の核です。


そして、ここまでに書いてきた失敗と再設計のすべてを通して見えてきたのが、本記事の最初の章から書いてきた問いに対する、いまの私の答えです。

AI を使うことが問題だったのではありません。問題は、記事を増やす前に、その記事が誰のどんな検討を進め、どう商談・受注につながるのかを設計できていなかったことです。

ここまでに書いた失敗と再設計を踏まえて、これからプロレクトとして何を提供していくのかを、最後に書きます。

プロレクトはこれから何を提供するのか

失敗を経て、私たちが立っている場所

ここまで書いてきたように、教科書サイトの整理は、いまも進行中です。38記事の noindex は適用済み、用語シリーズの統合は実装中、新しい記事制作のフローは動き始めたばかりです。すべてが完了したわけではなく、効果検証もこれから何ヶ月もかかります。

それでも、ひとつ言語化できるようになったのは、 プロレクトとして次に何をどう提供するか です。

私たちがこの失敗から学んだのは、「BtoB のコンテンツは、制作物単体ではなく、受注導線の中の役割として設計したほうがいい」ということでした。これは、机上で組み立てた論ではなく、自社サイトで実際に痛い目を見たうえで、データと判断で確認したものです。自分たちで失敗し、自分たちで止血と再設計をしている、という事実そのものが、いまの私たちが提供できる価値の中心 になっています。

プロレクトがいま提供していること

私たちは、「AI で記事を量産する会社」ではありません。

提供しているのは、BtoB 企業のホワイトペーパー、ウェビナー、SEO 記事、営業資料を、それぞれ単体ではなく、受注導線上の役割として設計・再設計する 作業です。「ホワイトペーパーを作りたい」というご相談に対して、まずお聞きしているのは、「そのホワイトペーパーが、誰のどの検討段階で、何を進めるためのものか」です。役割が決まらない限り、制作には入りません。これは、私たち自身が「役割が決まらないまま量産した結果」を経たからこそ、強い前提になっています。

同じ悩みを持つ会社──「コンテンツは出しているが、商談につながっている実感がない」「AI で記事を増やしたが、サイトの主張が薄まった気がする」──の伴走者として動いています。私たちが先に痛い目を見た分だけ、判断の引き出しは増えました。

最後に:論点整理から始めてみませんか

ここまで読んでくださった方の中には、本記事の数字や構造が、自社の状況と重なって見えた方もいるかもしれません。あるいは、自社のオウンドメディアやホワイトペーパー、ウェビナーが、「作って終わり」になっているかもしれない、と感じている方もいるかもしれません。

そういう方は、一度、自社のコンテンツを「受注導線上の役割」から整理してみてください。順位やクリック数より先に見えるべきものがある、というのが、いまの私たちの結論です。

プロレクトでは、 30分の無料相談で、現状の施策がどこで詰まっているかの論点整理 を行っています。すぐに発注をいただかなくても構いません。「自分たちの導線のどこが詰まっているのか」を一度第三者の視点で見立てたい、という方には、ぜひ使ってみていただければと思います。


本記事は、5部構成シリーズの第1弾です

次回(第2弾)では、38記事を一気に noindex にした実務手順──「捨てる」判断のプロセス を公開します。本記事では止血の方針までを書きましたが、第2弾では、どの記事を選び、どんな根拠でカテゴリ分けし、どう実装したかを、もう一段細かい粒度で書きます。

第3〜5弾も準備中です。

  • 第3弾:AI Overviews 時代の新しい記事制作プロセス(クエリ性質スコアの実務)
  • 第4弾:AI に何を任せるかを決めるルールブック(AUTONOMY_GUIDELINES の主要部分を公開)
  • 第5弾:定点観測編(38記事 noindex・用語辞典統合の効果検証)

シリーズを通して、私たち自身の試行錯誤の過程を、できる限り生のまま公開していきます。